住まいの売却時期を決める4つのポイント

住まいの売却時期を決める4つのポイントを紹介する女性

不動産の売却では「いつ売るか」によって価格が大きく変化します。もともと大きなお金が動く不動産売却では、時期の良し悪しが数十万円から数百万円の差につながることも珍しくありません。住まいを売却した後の生活を考えると、決して無視できない金額ですよね。では、住まいの最適な売却時期を、どう見分ければよいのでしょうか。

「市況(相場)」と「季節」について

住まいは、時期によって需要が変化します。では、住まいの売却は具体的にどのようなものに影響を受けるのでしょうか。まず「市況(相場)」、「季節」の二つについて見ていきます。

 

【ポイント①:「市況(相場)」】

不動産市場では、さまざまな要因から相場が形成され、それは常に変動しています。具体的な例としては、2009年のリーマンショックや2011年の東日本大震災で大幅な相場下落が続き、その後2012年以降は上昇傾向に転じました。

 

こういった価格上昇の背景には、政府が打ち出した経済政策「アベノミクス」や、東京オリンピックの経済効果への期待が影響していると考えられます。また、人口増が見込まれる地域の価格は上昇傾向、人口減が進む地域では下降傾向にあることも見逃せません。

 

このように、経済政策や大規模なイベント、人口の増減などさまざまな事柄が不動産価格を動かしています。従って、大きな流れを見誤らないように売却時期を計ることが大切です。ただし、市況の見極めはプロの投資家や不動産会社でも難しいもの。そこでまずは「購入時点よりも相場が上がっていれば売りどき」と考えるのも一つの方法です。

 

【ポイント②:「季節」】

住まいは「生活の場」ですから、世の中の活動の流れから影響を受けるわけです。賃貸物件を思い浮かべてみてください。1〜3月の住み替えシーズンには、条件の良い部屋が見つかりにくいですよね。反対に、この時期に入居者が決まらなかった部屋は4月を過ぎても空室になりがちです。

 

これは、売却についても同じことが言えます。いくら条件が良い物件でも、時期を逃すと買い手が見つからなかったり、希望価格で売れなかったりします。できるだけ希望通りに住まいを売却したければ、需要期の少し前から活動しはじめることが大切です。

「税制」と「築年数」について

市場・季節・税制・築年数で考える売却時期のイメージ画像

さらに、住まいの売却時期にかかわるポイントにはもう二つあります。「税制」と「築年数」です。この二つについて具体的に見ていきましょう。

 

【ポイント③:「税制」】

不動産を売却した際の譲渡所得には、譲渡所得税が課されます。この譲渡所得税は、「所有期間5年」を境に区別されることをご存じでしょうか。所有期間5年未満での売却を「短期譲渡所得」、5年超では「長期譲渡所得」と呼び、以下のように税率が変わるのです。

 

・短期譲渡所得(所有期間5年以下)……39.63%(内訳:所得税30.63%、住民税9%)

・長期譲渡所得(所有期間5年超)……20.315%(内訳:所得税15.315%、住民税5%)

 

また、居住用の場合に限り、以下のような軽減税率が適用されます。

 

・保有期間10年超(譲渡所得6,000万円以下の部分)……14.21%(内訳:所得税10.21%、住民税4%)

・保有期間10年超(譲渡所得6,000万円超の部分)……20.315%(内訳:所得税15.315%、住民税5%)

 

購入してから5回目もしくは10回目の元日を迎えたタイミングで、税金が安くなることを覚えておきましょう。住まいの売却では、こういった税率変更の節目も意識すると良いでしょう。

 

【ポイント④:「築年数」】

基本的には、築年数が短いほど売却価格で高値が付き、長くなるごとに安くなる傾向があります。しかし、価格下落は一定ではないのです。ここで意識したいのが「築15年」と「築20年」という数字。中古マンションの販売価格は、おおむね築15年までの下落幅が大きく、その後はゆるやかに安くなります。同じように一戸建ては築20年までは大きく価格が下落し、それ以降はほぼ横ばいです。どちらも価格の下げ止まりが起こる築年数がそのあたりとなっています。

 

マンションは、経年劣化への対応と資産価値の維持という目的で、建物全体の「大規模修繕」を必ず行います。これの第一回目の実施めどが、大体築15年目なのです。新築時点でピークだった価値が、人が住み、経年劣化で下がり続けますが、一旦15年目の大規模修繕で持ち直して以降、下げ幅がゆるやかになるということが推察できます。

 

一方、一戸建ては木造建築がほとんどで、日本では「築20年で一戸建ての建物は無価値」という考えが広く浸透していました。しかし、今や「良質な住宅ストックの形成」に向け、国がさまざまな方策で取り組んでいる中、築20年で査定価格0(ゼロ)という認識はなくなりつつあります。とはいえ、木造住宅の法定耐用年数は22年ということを鑑みると、新築からの価値の下落はおおむね20年で止まるという一定の線引きは、妥当かと思われます。

 

売主としては、価格が落ちきってしまう前、つまり築15年や築20年以前のできるだけ早い段階で売却を意識すべきでしょう。あとは、どれだけ劣化しにくい構造や素材で建てられているか、適正な修繕が施されているか、需要が高いエリアにあるか、売却時にリフォームやリノベーションを施工できるかといった物件ごとの状況で大分違ってくるということも認識する必要があるでしょう。

一括査定を利用してみる

ここまでの内容をもとに売却に最適な時期をまとめると、以下のようになります。

 

・市場相場が上昇傾向のとき

・需要期の2〜3カ月前(12~1月など)

・税率が変わるタイミング

・築年数(マンションなら築15年以内、一戸建てなら築20年以内)

 

しかし、初めて住まいを売却する人がこれらを全てカバーするのは容易ではありません。ですから、一旦は知識として備えておきましょう。実際に売却の必要が生じたら、所有物件は一体いくらで売れるのかが最も気になるところですね。そこで、まずは複数の不動産会社から見積もりを受けられる「一括査定」を利用してみましょう。一括査定で提示された価格は、さまざまなデータからはじき出された客観的評価です。また、複数の不動産会社から査定額を受け取るため、おおまかな相場観を養うのにも役立ちます。その上で前記の四つのポイントはどうかを改めて勘案して、売却の時期を絞っていくとよいでしょう。

 

ただし、一括査定で用いられるのは「簡易査定」です。これは、不動産の外面的なデータのみを参考にする計算方法です。つまり、高精度な査定ではないことを覚えておきましょう。中古の不動産では、簡易査定と実際に現地で査定する訪問査定の間に、大きな価格差が生まれることも珍しくありません。便利な一括査定サービスは、過度の期待はせずに大体の価格を確認するというくらいに考えるといいでしょう。

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